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皮脂欠乏症(乾皮症)
カサカサ肌はお年寄りに多いイメージがありますが、生活環境によって、若い人にも起こります。また、思春期前の子どもは肌の機能が未熟で皮脂の分泌が少ないため、多くの子どもが乾燥肌傾向にある印象があります。放置しておくと痒みが生じ、湿疹を生じることもありますので、清潔にしたあと保湿剤を塗るスキンケアを毎日行いましょう。
保湿剤は乾燥肌の状態、部位、季節などに応じて処方します。塗る量や塗り方についての指導をします。加えて、入浴の仕方をはじめ、カサカサを防ぐ生活ポイントをお話しすることもあります。
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手湿疹・進行性指掌角皮症
いわゆる“手荒れ”は女性に多く、主婦業、飲食店員、看護師・介護士、保育士、美容師などによくみられます。水仕事や洗剤類、紙類、布類を多く扱う人に多いです。乾燥の強い冬に増悪し、夏に軽快することが多いようです。アトピー素因などお肌の弱い人に多く見られます。
皮膚の乾燥と湿疹状態が併存することが多いので、保湿剤や湿疹を抑える外用剤を処方します。
薬を塗ると同時に、普段の生活で手の負担を減らす心がけがとても大切です。上述の手への刺激となるものを扱うときは、炊事用手袋などを使用して、手の負担をなるべく減らしてもらいます。お皿洗いは洗剤を使うときだけ手袋をすればよいと考えがちですが、洗剤はもちろん、お湯・水・根菜類の土・アクの強い野菜や葉物、ふきんをすすいで絞ることなどでも、手に負担がかかります。洗濯物を干す・たたむことでも手が乾燥します。出産後に急に手荒れになったといって来院される方が多いのは、赤ちゃんのお世話で手洗いが増えたり、リネン類の扱いが増えることによるのです。紙類も手の刺激になりますので、古紙やダンボールの整理の際も炊事用手袋を活用することを勧めています。
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アトピー性皮膚炎
治療の大きな柱は、スキンケア、湿疹の治療、悪化因子対策の3つです。湿疹は様々な要因で悪化することがあります。しかし、たとえ悪化しても適切な治療で回復させ、日頃のケアでよい状態を長く保つことができると考えています。
スキンケアは、皮膚を痛めないように清潔にし、保湿をする、大切な日課としましょう。
湿疹に対しては、年齢、湿疹の部位、湿疹の程度によって、それに応じた強さのステロイド外用剤やタクロリムス軟膏を処方します。痒みで掻き崩して悪くしている場合は内服薬も併用します。処方されたお薬の種類と使用する部位をよく守って、湿疹がしっかりよくなるまで外用しましょう。そして、よくなったあとはスキンケアを続けましょう。頻繁に湿疹が繰り返してしまう部位は、湿疹薬を1週間に1~2回、先回りして外用する、「プロアクティブ療法」を指導する場合もあります。
悪化因子は、個々の患者さんや年齢層によっても若干の違いが見られます。患者さんの日常生活や悪化したときの状況などを伺いながら、悪化因子を一緒に探し、対応策を考えていきます。
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脂漏性皮膚炎
頭部・顔面・前胸部など、脂腺の多い部分にできる皮膚炎です。発症に皮膚常在真菌のマラセチアが関与しているといわれており、治療に外用抗真菌剤を用いることがあります。頭の広範囲なフケ・痒みには、外用剤の処方に加えて、抗真菌剤入りのシャンプー・リンス(市販品)の使用をお勧めすることがあります。シャンプーの時に爪を立てて洗ったり、熱いお湯を使用すると、症状の増悪を招きますので、シャンプーの仕方やドライヤーのかけ方を指導することもあります。
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足白癬・足爪白癬(水虫)
いわゆる”水虫”は白癬菌による皮膚の感染症です。診断には、顕微鏡検査で白癬菌を確認することが大切です。よく似た状態でも、異汗性湿疹など、他の病気のこともあるからです。水虫を疑って、市販の水虫薬を塗っている場合、検査では白癬菌を確認できず、正確な診断に結びつかない恐れがあります。このような場合は、外用を中止して1~2週間後に受診していただくと、検査で確認しやすくなります。
水虫の外用剤は人によってはかぶれが生じることがあるため、初回処方量は20gまでに制限されています。両足全体に外用すると2週間程度持ちます。無くなる頃に再診していただき、かぶれの無いことを確認してから増量処方します。
爪水虫の治療開始にも、白癬菌の確認が必要です。爪白癬の状態と他に治療中の病気があるかなどによって、内服治療にするか、外用のみにするかを相談しています。内服希望のある場合は、飲み合わせがよくないお薬もありますので、必ずお薬手帳など現在内服中のお薬が分かるものをお持ちください。また、内服によって白血球数が下がったり、肝機能値が上がることがありますので、定期的な採血が義務付けられています。いずれの治療にしても、治療期間は長く、健全な爪に生え替わるまで、およそ1年から1年半かかります。
足白癬や爪白癬を放置していると、ご家族にうつったり、ご自身の体の他の部分にも感染することがあります。股の湿疹だと思って来院した人が、検査で股部白癬とわかり、足を診察すると足白癬があった、というケースも時々みかけます。気になる症状があれば受診することをお勧めします。
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疣贅(ゆうぜい・いぼ)
一般的には皮膚から飛び出ているできものをまとめて“いぼ”と呼びますが、皮膚科では、ヒト乳頭腫ウイルスの感染によって皮膚や粘膜にできるものをいいます。ウイルスは皮膚のごく小さな傷から侵入して感染するので、カサカサ肌やささくれなどの多い四肢、特に手足によくできます。お子さんの足の裏に“ウオノメ“ができたと言って連れて来られる場合、疣贅であることが多いです。顔や四肢によくできる扁平なものもあります。
当院では疣贅の治療は液体窒素凍結療法を行います。この治療法は、液体窒素という低温源を用いて患部を凍結させることで、壊死を起こさせ、除去する治療法です。患部の場所と形によって、綿球やスプレーやピンセットを使い、1つの病変に凍結・解凍を3~5回繰り返します。この処置は1~2週間に1回程度の間隔で、繰り返し行います。手や足、特に足底の疣贅は治療に数ヶ月かかることが多いです。
処置により患部がしっかり凍結されると、患部は徐々にかさぶたに変化します。かさぶたが取れるまで、顔では5~10日、その他の部位では2週間前後かかります。この間、塗り薬や絆創膏は必要なく、洗顔や入浴にも制限はありません。しかし、処置後の反応の程度は人により様々です。たまに水ぶくれや血ぶくれをおこすことがあります。小さいものはそっとしておいても水分が吸収され、かさぶたに変化していきます。あまり大きいもので、つっぱって痛む・動かしにくいなどの不都合がある場合は、処置をしますので来院してください。
疣贅の数が多い場合や、手足など治りにくいところにある場合は、治療期間短縮を期待し、漢方製剤のヨクイニンの内服を併用します。
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水いぼ
水いぼは正式には伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)といい、伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚感染症です。
幼少児によく見られますが、成人にもたまに見られます。
プールでよく感染しますが、水から感染するのではなく、互いの皮膚の接触や、ビート板やタオルの共用が感染の原因となるようです。
水いぼは放置しても自然に治ることが多いため、無理に治療はせず,経過観察でよいとする意見もあります。しかし、自然に治るまでの経過は数ヶ月から5,6年と個人差があります。その間に,多発したり,他の人にうつしてしまうことがあります。また、痒みを伴うことがあるので,かき壊して湿疹になったり、とびひになってしまうことがあります。また、施設によってはプールへ入ることが許可されない場合もあります。では摘除すれば完治するかというと、すでに感染していたウイルスによってまた新しくでてきたり、新たに感染したりします。
当院では水いぼの数や部位、お子様の状況,お子様と保護者の方のご希望などをお伺いし、摘除するか、保存的に経過を見るかを相談して決めています。摘除は痛みを伴いますので、痛みを軽減する麻酔のテープ剤を使用することも可能です。この場合はテープを貼ってから1時間、院内でお待ちいただくことになります。水いぼの数があまりに多い場合や,痛みのため摘除したくない場合は、保存的に経過を見ることになります。その場合は,乾燥肌があると水いぼが広がりやすいため、保湿剤を処方し,毎日スキンケアをしてもらいます。かきむしって湿疹になったり,とびひになってしまったときは、その治療をします。また、紫雲膏という漢方の軟膏を塗布すると治療期間が短縮すると言われているので,お勧めする場合があります。ただ、この軟膏は保険診療では処方できないので,薬局で購入していただくことになります。
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とびひ
正式には伝染性膿痂疹といい、細菌が皮膚に感染することで起こります。体の一部に起きた水ぶくれやただれが、あっという間に体のあちこちに広がる様子が、火事の火の粉が飛び火することに似ているため、「とびひ」と呼ばれています。
初期のごく軽症の場合は外用のみでよくなることもありますが、多くの場合は抗生剤の内服治療を行います。内服を始めてから3~5日目に必ずもう一度受診してもらい、抗生剤が効いていれば追加処方し、効いていない場合は種類の変更をします。
とびひは学校を休む必要はありませんが、接触感染を起こす恐れがあるので、病変部はむき出しにせず、軟膏を塗ってガーゼなどで覆っておきましょう。よくなるまでは、プールはお休みしましょう。小さな兄弟がいる場合は、入浴中の接触は避けるようにし、タオルの共用はやめましょう。
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にきび
にきびの治療には様々な方法があるので、状態に応じた治療を提案しています。治療の効果が感じられるまでの期間には個人差があります。すぐに効果が出なくても、悪化させて跡を残さないために根気よく治療を続けましょう。
皮膚科でもしばらく前までは赤にきびに対する抗菌薬が主体でしたが、最近では赤にきびになる前の面皰(白にきび)に対する治療ができるようになりました。この種類の外用剤は、面皰の毛穴の詰まりを取る効果があり、効いてくると乾燥感やヒリヒリ感が出てくることがあります。十分な効果を得るには、この乾燥感・ヒリヒリ感を押さえるために、スキンケア(保湿)が重要です。市販の基礎化粧品はノンコメドジェニック製品(にきびができにくいことを確認している製品)を選びましょう。
赤にきびや膿の強い皮疹には、状態に応じて外用抗菌剤や内服薬を処方します。ただし、漫然と抗菌薬を使うことは耐性菌の出現を招くので、長期の使用は控えています。
尚、当院ではピーリング(自費診療)は行っておりません。
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肝斑(かんぱん)
肝斑はシミの中でも主に30~50歳代の女性の顔面に生じる難治性の色素斑をいいます。紫外線や摩擦で増悪します。
当院でも肝斑の治療にメラニンの合成を抑制するハイドロキノン製剤を使用できるようになりました。保険外診療であり、使用にあたっては重要注意事項がありますので、ご希望の方は担当医(林医師)の診察の際に相談してください。
※診療医により、説明の仕方や治療内容に多少の違いがあります。